消費税率アップは必要か?

 国と地方の借金が併せて1000兆円弱。赤ちゃんも含めて国民一人当たりの借金額に換算すると900万円弱
 これをどうにかするには、消費税率アップしかないのか、と心のどこかで思っていた。また、消費税を上げないと宣言している鳩山内閣は甘いとも考えていた。

 しかし、これだけ自民党や小泉、竹中を批判してきた自分であるが、まだまだあまちゃんである事を教えられた。
 大村大次郎著「悪税が日本を滅ぼす」新潮文庫を読んだ。副題は「元国税調査官が暴露する不公平税制のからくり」である。

 著者は、まず、格差社会を生ぜしめたのは小泉内閣と竹中平蔵だと指摘し、竹中平蔵著『竹中教授のみんなの経済学』を引き合いに出す。そこには『会社は給料を下げなさい、そして家庭は、給料が下がった分は株で儲けて補いなさい』と書いてあり、竹中平蔵は日本経済をその持論どおりに誘導したと指摘している。さらに株は資金が潤沢にあるものの方が絶対的に有利であり、低所得のサラリーマンが竹中のいうように株で儲けることは非常に困難であると説いている。

 一方、ここ数十年の間、資産家や大企業には大減税が行われてきたことを著者は指摘している。
 昔は、高額所得者の所得税は8割、資産家の相続税は75%であったものが、この十数年、国際競争力をつけるためにと称して、金持ちや大企業には減税を行い、一方で税金を取ることのなかった、小企業や貧乏人からも税金を取るようになったと指摘している。

 そして最も重要なのは、「第6章 格差を広げる消費税」消費税の危ない罠 の部分である。そこには、高齢化社会に備えるという名目で導入された消費税が実際に高齢化社会のために使われた形跡はほとんどなく、消費税の10兆円ほとんど全てが、ほぼ同時期に行われた大企業や高額所得者の減税に使われたというのである。大企業や高額所得者の減税は継続しているのであるから、要するに消費税は大金持ちの減税のために貧乏人から税金を巻き上げるシステムだということになる。大企業や資産家には大幅な減税を行い、貧乏人からは金を巻き上げる。これが日本の現状なのである。

 この本には、他にも興味深いことが書いてある。
 公立中学の中学生に使われている税金は一人当たり年間約100万円であるという。40人学級であれば、一クラスに年間4000万円掛かっていることになるが、そんな実感はない。では、どこに金が使われているのか。教育委員会や文部科学省直属の公益法人が文部官僚の天下り先となり、子どもの教育費を天下り官僚が横領しているという。
 教育委員会の存在は過去に随筆に書いた事もあるが、卒業式の日の丸掲揚や教師の起立の状態を監視するのが仕事の暇な教育委員会は早く潰した方がよい。そんな組織に税金を掛けるほど日本は裕福ではないはずである。教育委員会や公益法人を潰せば、10人、20人学級も直ぐ実現できるということになる

 現在、加賀乙彦著「不幸な国の幸福論」集英社新書を読んでいる。その第二章『「不幸増幅装置」ニッポンをつくったもの』の中で著者は、日本の社会保障が先進国で最低水準である事を示している。日本は正に不幸増幅装置であると納得できる。
 例えば、失業保険の給付を受けていない失業者の割合は、ドイツ6%、フランス20%、イギリス45%、アメリカでも59%。それに対して日本は77%で主要先進国の中で最悪水準で200万人を越えているという。また、収入が最低生活水準を下回る世帯のうち、生活保護を受給している割合は、欧米先進諸国が少なくとも50%以上(ドイツ70%超、イギリス80%超)なのに対し、日本は20%以下だという。
 アメリカは、自立自己責任の国で社会保障も遅れていると思っていたら、そのアメリカよりも失業保険を受けていないのである。

 生活保護の水準以下の低所得世帯のうち、生活保護を受けていない世帯に関する推計データは、4月10日付朝日新聞の6面に載っていた。厚生労働省の調査では、229万世帯で低所得世帯の68%だという。要するに32%しか生活保護を受けていないのである。確か、厚生労働省はこの手の調査すらこれまで行っていなかったと思う。これが日本の福祉の実態なのである。

 民主党は事業仕分けをして、税金を捻出しようとした。しかし、そんな生ぬるいことでは日本は再生できないであろう。
 安易に消費税を上げないと宣言したことは評価できるが、金持ちや大企業への増税、不要な役所や天下り法人の廃止、公共事業による景気回復策の禁止等の施策を行うべきである。
 大企業が儲かれば、労働者も潤うという小泉、竹中路線が完全に破綻したことは現状の労働者の疲弊を見れば明らかである。
 教育委員会等の不要で無駄な金遣い公務員を無くせば、生徒がより良い環境で授業を受けられることは明白である。
 公共事業と言う馬鹿の一つ覚えの景気刺激策はもうたくさんである。「悪税が日本を滅ぼす」は指摘する。「公共事業に依存する体質になってしまうと、常に税金に頼っていかなければならなくなる。つまり真に自立した経済力をもてないのである。」「日本の政治家の半数近くは、建設業者によって食わせてもらっていると言ってもいい。政治家は公共事業を誘致して建設業者を潤す、建設業者は献金して政治家に還元する、こういう“食物連鎖”が完全に出来上がっているのだ。」

 民主党の小沢幹事長が建設業者と癒着しているであろう事は容易に想像できる。この古い体質を引きずった民主党に日本の再生ができるとは思えない。自民党は当然無理としたら、日本は一度破綻するしかないだろう。日本人は、自己変革能力の乏しい民族だと思う。経済的に破綻して、ゼロから再出発するしかないか

(2010年4月11日 記)

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